肩が痛い,腕が上がらない

摘要

肩の痛みや可動域制限は頻度が高い.特に 肩関節由来の夜間痛は「横になると痛む」「痛 みで目が覚める」という症状が出るため， ADLの障害が著しい.これらの痛みの多く は保存的な加療でも治療可能なため,初診の 段階で正しく診断することが重要である.肩関節の痛みを訴える患者の 診察フローチャート（図1）外傷歴があり，明らかな変形を認める場合 は，①上腕骨頸部骨折，②肩関節脱臼,③肩 鎖関節脱臼の鑑別が必要となる.変形を認め ず，挙上障害がある場合は④外傷性腱板断裂 を考える.外傷歴がない場合，急性発症であり，さら に圧痛部位が存在すれば⑤石灰沈着性腱板炎 を,感染徴候を認める場合は化膿性肩関節炎 を考える.緩徐に発症した肩の痛みで疼痛を 認める場合，全方向に可動域制限があれば⑥ 凍結肩（狭義の五十肩）を，特定方向のみに 可動域制限があれば⑦腱板断裂（慢性?小断 裂）を考える.また,緩徐に発症した挙上制 限で疼痛を認めない場合，⑧腱板断裂（慢 性?大断裂），⑨頸椎神経根症（C5領域）の 可能性が高い.