慢性の腹痛:機能性消化管障害

摘要

症例:40歳台男性.2年前よりほぼ1日中続く腹痛に悩んでおり,これまで何回も救急外来を受診している.血液検査,腹部エコー,造影CT消化管内視鏡などあらゆる検査を複数回行ったが,いつも「異常はありません」と言われるだけである.処方される整腸薬や鎮痛薬を飲んでも症状は改善しない.腹痛の原因もわからなければ症状を和らげる方法もわからず，困り果てている.症状は日内変動に乏しく,排便や食事による変化は目立たない.下痢や嘔吐など，腹痛以外の消化器症状はないが，気分の落ち込みや食欲の低下があり，ここ1年で体重は5kg減っている.疼痛のせいで仕事もままならず，もともと不仲だった妻とは半年前に離婚した.3日前にも救急外来を受診したが,やはり検査で異常はなく，鎮痛薬を渡されるのみであった.症状が持続するため,患者はあなたの担当する初診外来を訪れた.