ナルデメジントシル酸塩の使い方

摘要

末梢性muオピオイド受容体拮抗薬のナルデメジントシル酸塩(NAL,商品名:スインプロ イク?)は,わが国初のオピオイド誘発性便秘発症の作用機序に沿った治療薬である。NALは,オピオイド誘発性便秘に対して従来型便秘薬でコントロールが困難な場合の第 二選択薬として,わが国のガイドラインで推奨されている。実臨床では,オピオイド導入と同時のNALの処方は頻繁に行われている。タペンタドールの副作用(主に消化器症状:悪心 便秘)出現は，NAL内服で低下する。これまでの報告によれば,緩和ケアをうけているがん 患者の23～65%が便秘であり，オピオイドが投与され ていない場合は61～63%が,オピオイドが投与された 場合は83～87%が便秘である。便秘症治療薬は主に慢 性機能性便秘症に対する治療薬であるが,本稿で紹介す る末梢性muオピオイド受容体拮抗薬であるナルデメジン トシル酸塩(NAL)は,2017年にオピオイド誘発性便 秘症(opioid-induced constipation ； OIC)への治療薬 として保険収載されたわが国初の薬剤である。