実時間フードバックおよび信号最適化機能を有する交通流シミュレーション環境の構築と検証

摘要

高度道路交通システム（ITS）は，交通事故や渋滞による社会的損害を解決を目的としたシステムで，より安全で効率的な社会の実現に向けて研究開発が期待される．しかし，開発されたITSの検証を行なう際に現実世界の交通システムに対して実装を行なうことは，コストや社会への損害リスクの観点から好ましくない．そこで，現実世界の交通システムを模擬する交通流シミュレータが開発，使用されている．交通システム効率化に向けた研究としては，計測情報をもとにした信号機現示の最適化や制御アルゴリズムが多数提案されている．こうした研究は，これまでの計算機，センサ，通信などの技術的限界から車両群を流体として捉えるマクロ的視点に基づくものであった．しかし，計算機性能の向上や第5世代移動通信技術をはじめとするIoT技術の進展は目覚ましく，現在ではこれまでの技術的限界を超えたシステムを考えることが可能である．そこで著者らのグループでは，各車両の情報やダイナミクスを考慮したミクロ的視点に基づく実時間信号機制御アルゴリズムを提案した．