書評:消化器診療プラチナマニュアル, 小林健二著

摘要

『消化器診療プラチナマニュアル』と題さ れた小さなマニュアルが,このたびメディ カル?サイエンス?インターナショナル社より上梓された.著者は小生が日頃から敬愛する優れた消化器内科医,小林健二氏である.一口に消化器疾患といっても,消化器は口腔から肛門までの消化管に加え肝胆膵などの性格の異なる臓器を含み,消化?吸収,運動,代謝,免疫などの多彩な機能を担っている.病因?病態もさまざまで,診断的検査は膨大であり,治療アプローチも薬物治療だけでなく,外科手術,内視鏡治療,IVRなど選択肢は多彩である.よい消化器診療のためには内科全般にわたる広い知識?技術と多少の外科的知識が必要であり，驚異的なコンパクトサイズの本書を手にして,本当にこれで大丈夫なのかというのが偽らざる第一印象であった.内容は3部構成である.第1章に主な消化器治療薬,検査?手技が解説されている.治療薬の網羅性はむしろ十分以上で,消化器専門医が日常使用する薬剤の範囲を超えるほどであり,本書の読者対象には参考までにという辞書的な役割を狙ったものと思われる.検査?手技は逆にきわめて簡潔に記載されているが,それぞれの概要?適応?注意点をしっかり把握することが,患者にとって無駄で有害な検査介入を防ぐうえで 重要である.