高齢者の潜在性甲状腺機能低下症

摘要

潜在性甲状腺機能低下症は,放置すると顕性の甲状腺機能低下症や心血管疾患の誘 因となりうる.しかし高齢者に関しては,治療しても予後やQOLを改善するというエビデンスに 乏しく,本当に治療すべきか慎重に判断する必要がある.TSHの値に影響を及ぼす要因として,ヨウ素摂取量や薬剤,うがい薬使用の有無な どに注意する.70歳女性.特定検診でLOLコレステロール150mg/dLを指摘され,あなたの外来を受診した.特に症状で困っていることはない.畑仕事をしながら自立した生活を 送っているが,食生活ではやや脂質摂取が多めのようだ.念のために二次性の脂質異常症を 考慮して甲状腺機能を測定したところ,甲状腺刺激ホルモン(TSH)8.4 muU/mL, FT_4 0.95 ng/dLと,TSHは上昇してし、るがFT_4は正常範囲内であった.改めて診察したが,徐脈や浮 腫などの所見はない.治療はどのようにすべきだろうか?