数学者の思案-10数学の試験採点

摘要

私にとっては数学は研究対象だが.多くの人にとっては学校で習う数学がすべてであり，その中でも試験科目としての役割が大きい。そのため数学の試験には多くの人が関心をもっているが，数学は答えが一つであり，採点は容易であると思つている人が多い。しかしまったくそんなことはなく，採点はもつとずつと主観的なものなのだ。これはもちろん適当に感覚で採点しているという意味ではない。たとえば小論文の採点が完全に客観的にできると思う人はいないであろう。数学は小論文よりは採点の振れ幅は小さいと思うが,それでも真剣に考えれば考えるほど，採点者個人の考え方による違いが出てくるのである。数学の場合，誰が見ても満点，誰が見ても0点という答案はもちろんあるが，ある程度以上複雑な問題であれば，前者はとても少ない。また後者も紙以外にはそんなに多くはないのだ。