腹部膨隆

摘要

腹部膨隆とは仰臥位にて臍部や腹部の一部が剣状突起と恥骨を結ぶ線よりも突出している状態を指し，その原因は多岐にわたる（表1）.なお，腹部腫瘤は腹壁や腹腔内臓器に生じた“しこり”のことであるが，腹部腫瘤の患者が「お腹が張る」と訴えることもあるので，鑑別診断に含める必要がある.一般に，腹部膨隆は「急性の経過か，慢性の経過か」および「腹部全体の膨隆か，局所の膨隆か」で鑑別診断が行いやすくなる.「急性の経過」で発症するのは，腸閉塞，腸重積，S状結腸軸捻転症，中毒性巨大結腸症，付属器の捻転，腹腔内出血といった緊急性が高い病態であり,強い腹痛を伴うことが多い（腸重積は成人発症例が約5存在し,小児例でみられる間欠的腹痛?嘔吐?血便の3主徴は，成人発症例では稀である）.これらの緊急性の高い疾患を除外したうえで，さらに鑑別診断を進めていくためには,「腹部全体の膨隆か,局所の膨隆か」を聴取することが有用である.