安藤忠雄の卓越化の方法

摘要

本論は、日本を代表する建築家である安藤忠雄が、いかにして、現在の位置まで上り詰めることができたのか、という問いを立て社会学的に検討するというものである。有名建築家は当然ながら、最初から有名だったわけではない。しかし、「いかにして」という問いが立てられることはほとんどない。今回の特集に関して、社会学の研究者である筆者に声がかかった理由は、この「いかにして」の部分に光を当て、検討する役割を期待されているからであろう。というわけで、本論では、安藤がどのようにして、日本を代表する建築家という今の地位を手に入れたのか、ということについて高校を卒業した18歳から「住吉の長屋」を発表した35歳までの安藤の軌跡を迪ることで、その一端を明らかにしていきたい。本論で用いている「卓越化」「界」「賭け金」などといった用語はフランスの社会学者P.ブルデューが彫琢した理論である。用語の定義について詳細に解説する紙幅がないが、前後の文脈から理解できるように記述している。正確な定義は拙著(松村2021)を参照していただきたい。