生命体としてのウイルスを見直す

摘要

ウイルスはラテン語で病毒の意味である．その名前のとおり，人は天然痘，狂犬病などさまざまなウイルスに苦しめられてきた．20世紀に始まったウイルス学は当然ながらウイルス感染症の予防と制圧を大きな目的として進展し，1980年には天然痘根絶という偉業がなしとげられた．一方で，20世紀後半からマールブルグ病，エボラ出血熱，ニパウイルス病などが突然現れ，SARS，トリインフルエンザがそれに引き続いている．いずれも野生動物由来のウイルスによるものである．その結果，動物由来ウイルスへの関心が急速に高まってきた．