鼓動するランドマーク建築

摘要

昨夏，スペインの北側力ン夕ブリア地方に位置するサン夕ンデールという小さな都市を訪れた．夏のセミナーで有名なメネンデスべラヨ国際大学に招かれ，「Landmaark Architecture」というテーマで講演する機会に恵まれた．ビルバオ空港から車で約2.5時間と，交通の便にはあまり恵まれない立地だったが，王室の避暑避寒地としても知られる美しい街並みは，まるで地中海のマルセイユかモナコのような気高さで，長年にわたり大切に守られてきた地域環境への誇りが感じられた．宿舎となったマグダレナ宮殿は，静かな丘の上に佇む上品な王宮で，豊かな森に囲まれたまさに地域のランドマークであった． 私は，1970年から1983年に設計した43店舗の京都コミュ二ティバンクC。コミュ二ティバンクの空間計画― その思想と実践：/CDI編/1983年／ 京都信用金庫，本誌72 12，参照）が，同じように人びとに支えられ地域のシンボルとして親しまれてきた事例を挙げ，「Landmark Architecture」とは単に奇抜な外観や豪華さではなく，地域に育まれた文化の象徴であるということを述べた．