編集企画にあたって…

摘要

眼腫瘍は日常診療で遭遇する機会の少ない稀な腫瘍が多いにもかかわらず,結膜 腫瘍,眼瞼腫瘍,眼窩腫瘍,眼内腫瘍（虹彩腫瘍,毛様体腫瘍,脈絡膜腫瘍,網膜腫瘍）と種類が多岐にわたり,さらに良性や悪性と分かれるため,種類は膨大な数にの ぼります.それぞれの種類によって悪性度も違い,適切な治療も異なるため,眼腫 瘍を一概に論じることは困難であるばかりか,その多くで未だ病因や病態が不明で あるがゆえ診断のバイオマーカーや治療法も確立していません.脂腺癌,結膜リン パ腫，ぶどう膜悪性黒色腫や網膜芽細胞腫等,一度はどこかで診たことや,聞いた ことがあっても,しばらく診ないため毎回あたかも初めて診たように以前診た経,験 を忘れてしまうのではないでしょうか.眼腫瘍は母斑や脂漏性角化症,時に悪性腫瘍との鑑別を要する霰粒腫等も含めれ ば日常診療でよく遭遇しますが,多くの眼腫瘍は発生頻度が稀ながら,眼腫瘍を専 門にしている眼科医も少ないのが現状です.近年の角膜や結膜疾患の診断?治療の 劇的な進歩と比較して,さらに眼科学の分野を越えれば胃癌,大腸癌，肺癌等に代 表される罹患数の多い主要な癌と比較して,眼腫瘍の希少かつ特殊性により大規模 な臨床試験を行うことは難しく,evidenceが構築しにくいといった欠点が存在しま すが,低侵襲な診断や治療等,新しい取り組みも行われてきています.