水道水の臭気に関する問題と対策

摘要

日本における水道の普及率は98%を超え(2020年で98.1%),国民の生活を支える必要不可欠なライフラインのひとつとなっている。微生物学的にも化学的にも「安全·安心」な水道水の供給が必須であることは論を俟たない。しかし一方で,アメリカにて行われたボトルウォーターを日常的に飲む層に対するアンケートでは,水道水ではなくボトルウォーターを飲む理由として,安全面(18%)を大きく引き離し，美味しいから(39%)との結果が出ている1)。日本におけるアンケートでも，水道水を直接飲まない理由が「美味しくない」からであると回答した割合が,東京都水道局調査では28%2),横浜巿水道局調査では24%3)であった。このように,美味しさの面からボトルウォーターへのニーズが高まる現状を考えると，安全·安心な水の供給はもちろんのこと，国民の誰もに気持ちよく飲んでいただけるような「美味しい」水道水の供給を目指す必要があろう。本稿では，美味しさに直接影響を与える水道水の「臭気」の種類と原因物質,臭気イベントが発生したときの原因究明法,さらには水道における臭気への対策についてまとめる。