紙メディアによる表現が必要な領域

摘要

21世紀初頭の現在，電子ぺーパーやデジタルペーパーと呼ばれる新しい表示装置の出現と共にデジタル技術やネットワーク技術を背景に人間のコミュニケーションの方法は新たな段階に人ったという見方がある。 しかしデジタルとネットワークの象徴としてのインターネットの広範な普及にかかわらず，相変わらず紙は情報を支え定着させるメディアの中心に位置しており，デジタルの拡がりが牽引する形で紙メディアの消費量は増大しつつあり，減少に向かう気配はない。本稿では改めて長い歴史を刻んできたメディアとしての紙や書物の特徴を捉え直し，情報伝達において紙メディアでしか表現できないのはどのような領域なのか，また情報化社会の進展の中で，書物のような単に紙メディアを束ねた以上の深遠な意味をもつ物質が，今後どのように展開するのかをデジタルメディアと対比させて考えて見たい。