とってもやさしいFRPの化学 その17：脱泡·消泡

摘要

トラブル関連解説の第二弾として，脱泡剤あるいは消泡剤について考えてみたいと思います。FRPの成形にあたっては，マトリックス樹脂に気泡が形成されないようにする必要があります。気泡が形成されるとそこに応力が集中して破壊の起点となるばかりか，繊維との接触面積が低下すると応力の伝達能力が下がって強度が低下してしまうのです。さらには，外部からの液体の浸入経路となる可能性もあります。気泡は樹脂内に溶け込んだ気体が硬化時に相分離して形成されるか，樹脂の重合反応時に生成する水などの縮合物が蒸発して形成されるものと考えられます。したがって，硬化前の液状の状態の時に周囲を真空にしてこれら気泡の原因を取り出してしまうことで，発生を抑制することができます。しかしながら，樹脂の粘度が高い場合や，織維を含む充填物がある場合には，脱泡剤·消泡剤を処方することで気泡を抜けやすくすることが有効な場合があります。