エネルギーを安定に伝える波「ソリトン」

摘要

昨年末のスマトラ沖地震は、地震自体よりも地震の引き起こした津波による災害がインド洋各地に甚大な被害を及ぼした点で、津波の恐ろしさを改めて全世界に知らしめた事件であった。津波を現象的に見ると基本的には波の一種で、水面のさざ波や音、光などと同じ波であるが、従来の線形力学では律しきれない非線形の特徴を有する波である。それはソリトンと呼ばれ、普通の波より減衰が少なく遠くまで伝わるのが特徴で、だからこそ津波は最初に得た巨大なエネルギーを減衰せずに遠くまで伝え、思いもかけない被害を生ずるのである。このエネルギーを塊で安定的に伝える波は意外にもいろいろなところに存在し、例えば導電性ポリマーの導電性はソリトンの存在で導電性を発揮することが判ってきたし、光ファイバー通信に応用すると通信能力を飛躍的に増大させることが期待されている。 そこで今回は、このソリトンについて記してみた。