テストステロンと運動療法

摘要

近年,血中テストステロン濃度の低下やそれに伴う男性性機能障害が,死亡や心血管疾患 (CVD)リスクを反映するバイオマーカーとなることが数多く報告されている.このことから,メンズヘルスが男性の健康と密接に関係していることがわかる.「運動は健康の維持?増進において重要である」という概念は,近年ではもはや自明であり,特に,肥満や2型糖尿病,心血管疾患や脂質異常症において運動が有する役割は非常に大きい.臨床現場においても,これらの疾患の予防や治療に運動療法が用いられる場合も少なくない.一方，最近の研究で,運動が血中テストステロン濃度や男性性機能障害に対しても有効であることが示唆されている.テストステロンは主に精巣や副腎で産生されるが,運動刺激によって骨格筋においてもテストステロンが局所的に合成される可能性が報告されている.また,全身持久力や筋力を高く保つことや定期的な身体活動が血中テストステロン濃度や男性性機能障害に対して保護的に作用する可能性も報告されている. 本稿では,CVDのバイオマーカーとしてのテストステロンや男性性機能の役割,およびメンズヘルスの維持?増進における運動療法の役割について,これまでに報告されている研究を概説する.