ェンタルピー駆動の相互作用とエントロピー駆動の相互作用

摘要

分子間の相互作用において，ギプスの自由エネルギー変化ΔGと，ェンタルピー変化A/7およぴェント口ピー変化ΔSの間には，式ΔG=ΔH-TΔSが成り立ち，自発的な反応ではΔGは負の値となる。ΔGの負の値が大きければ，分子間に強い相互作用がはたらいていることを意味し，その結合が強いことになる。負のΔG値に対して，ェンタルピー変化の寄与が大きい相互作用を「ェンタルピー駆動の相互作用」といい，水素結合，静電相互作用，ファンデルワールス相互作用が関与しており，特異性の高い相互作用となる。一方，エントロピー変化の寄与が大きい相互作用を「ェントロピー駆動の相互作用」という。分子間に疎水性相互作用がはたらく場合，結合前の分子の表面に束縛されていた水分子が自由になるためエントロピーが増大する。複合体を形成する際に自由になる水分子が多い，つまり疎水性相互作用に関わる面積が大きいほど，ΔGの負の値が大きくなり，結合が強くなる。一般的に疎水性相互作用は，水素結合やファンデルワールス相互作用に比べて特異性が低いと考えられるため，創薬の際にはェンタルピー駆動で相互作用する薬剤候補が選ばれる。