日本語母語話者と中国語母語話者における促音·非促音の知覚範疇境界

摘要

日本語母語話者と中国語母語話者における促音·非促音の知覚範疇境界と判別感度を，発声速度および母音無声化の有無を要因とする知覚実験によって調べたところ，日本語母語話者の知覚範疇境界は発声速度に応じて変化した。しかし，中国語母語話者の知覚範疇境界はほぼ一定のままであった。また，中国語母語話者の判別感度は日本語母語話者に比べて極めて低かった。これらの結果は，中国語母語話者における促音·非促音の知覚的区別が曖昧であること，および促音·非促音の正確な区別には日本語の音声情報処理能力が必要であることを示している。一方，判別感度は，日本語母語話者と中国語母語話者の両方において，母音無声化無し条件よりも母音無声化有り条件のほうが低かった。この結果は，母音無声化による判別感度へ影響が，各言語に依存する高次の音声情報処理を介するのではなく，どの言語にも共通する低次の聴覚情報処理を介している可能性を示唆している。