ミリ波帯における集光型レンズアンテナを用いた自由空間法による複素誘電率テンソルの測定と電波吸収体への応用

摘要

ゴム材に損失材として例えば，カーボン粒子を混合した吸収材料は，その製造工程においてロールで圧延してシート状に加工するために，カーボン粒子やカーボン繊維が圧延方向に配向し，シート面において電気的特性に異方性が生じる．これに対し我々はこれまでに複素比誘電率テンソルの測定法として7集光型レンズアンテナとベクトルネットワークアナライザで構成される測定系を使用し，サンプルを面内で回転させる自由空間反射法を応用した手法を提案した．本報告では，自由空間透過法による複素比誘電率テンソル測定法を提案し，自由空間反射法による測定値と比較した結果，その両者はほぼ一致することを示した．また，本手法の応用例として電波吸収体を例に，透過法により得られた複素比誘電率テンソルの値から電波吸収体の吸収量を計算した結果，吸収ピーク周波数が入射電界方位により変化することなど，其方性を積極的に利用した吸収体への応用の可能性を示した．さらに，吸収量の測定値と測定した誘電率テンソルを用いて計算した計算値を比較した結果，最大で2dB程度の差異で良好に一致し，提案した測定手法は電波吸収体などの設計に十分有効であることを示した．