都市化地域の河川流域におけるBODに対する窒素負荷の影響

摘要

近年，下水処理で除去できなかった窒素の硝化に由来するN-BOD（Nitrogenous BOD）がBODに寄与していることが指摘されている。 本研究では，急速に都市化が進行している広島県東広島市を流れる黒瀬川を対象に，BODに対する窒素負荷量の影響を明らかにすることを目的とし，BODと全窒素の経年変化，無機態窒素の河川水中での動態，BODとN-BODの値について検討を行なった。 支流・市街地では，過去16年間で下水道や合併処理浄化槽などの普及によりBODは減少したが，窒素の減少傾向は認められなかった。 しかし，上流・市街地のN-BODはBODの5～22％と低いため，BODの低減には有機汚濁の改善が必要であると考えられた。これに対し，下水処理場より下流では，N-BODがBODの42～63％を占めており，窒素の削減がBODの改善に有効であることが示唆された。本調査の対象流域のように急速な都市化が進み，土地利用・下水道整備の状況が多様な地域では，短い区間であってもBODを左右している要因が異なり，それに応じた低減策を考える必要があるといえる。