熱帯雨林研究を通した環境認識の共有を

摘要

さまざまな経緯と歴史を経て，ようやくウォークウェイ，ツリータワーに加え，林冠クレーンが，サラワクの熱帯雨林に完成した．生物多樣性条約にからむ遺伝子資源の先進国の占有に対する懸念等で，現地での正式許可が得られるまで，かなり長い時間を要した．しかも，まだ問題が完全に解決したわけではない．3月にミリで行われた初めての林冠の生態学的役割についての研究国際会議では，欧米代表が熱帯雨林の保護を力強く訴えたのとは対照的に，サラワク政府関係者は，（森林の一部伐採も含む）開発と環境維持（保護）の調和を訴えた．私たちは改めて，地球環境問題における「南北問題」を，ここサラワクの熱帯雨林でも実感することになった．