頚動脈波による脳動脈閉塞評価システムの開発

摘要

本研究の目的は，救急医療の現場での使用に適した脳動脈閉塞簡易評価手法の開発である．救急医療の現場において脳動脈の閉塞や狭窄を簡便かつ迅速に判断できれば，適切な搬入先での迅速な処置につながり，後遺症の軽減や，死亡率の低下が期待できる．そこで私たちは頚動脈波に着目した．頚動脈波には脳動脈内の閉塞からの反射波が含まれると考えられるため，健常者と片側の脳動脈閉塞を持つ患者の左右の頚動脈波を，圧電センサを用いて測定し比較した．その結果，閉塞患者では左右の脈波波形が異なる傾向があった．さらに，左右差を定量的に評価するために波形の相互相関関数や，正負のピーク数，脈波波形の立ち上がりの傾きを検討し，各特徴量において健常者と閉塞患者の波形の特徴の傾向を調べた．閉塞患者では特に個人差が大きいため，一つの特徴量では評価が難しく，複数の特徴量を併用した評価が求められる．