水中で通信と電力を同時に伝える無線伝送システム

摘要

日本の河川は短く流れが急であり，毎年のように水害が起きているためその対策は急務である.一方で，広大な排他的経済水域を持ち，豊富な海洋資源を有する国でもある.そのため，水に係るさまざまな政策がとられている.例えば，災害対策を図る国土強靭化計画では，ダムや橋梁，上下水道といったインフラ設備の劣化診断と長寿命化が進められている.Society 5.0では，海洋基本計画に基づき海洋観測プラットフオームの構築とともに，観測された海洋情報のビックデータ化が進められている.他にも養殖業の効率化を図るため，生育状況の把握とデータ化や，生簀や網の点検作業の自動化も進められている.これらを実現するコア技術の一つとして水中ドローンが期待されている.ドローンといえばクワッドコプタゃマルチコプタといった無人航空機が連想されるが，その技術は空だけでなく水中でも活かされようとしている.近年，メーカによる水中ドローンの開発競争が激しくなつており，有線型やバッテリ型などさまざまなタイプの水中ドローンが市場に投入され始めている.この状況が加速すると，次はドローンのエネルギー源が問題となってくる.有線型は収集したデータをすぐに回収できる 一方，ドローンの移動範囲に制限がかかる.また配線が海底の岩場に引つかかるといったような問題も生じる.バッテリ型は有線型の問題を解決できるが，データの取得·充電のため浮上·引き上げ·バッテリ充電or交換·再潜航といった作業が必要となる.そこで，水中でも無線による給電や情報通信といった無線システム化が求められている.