聴覚特性を考慮した省電力音響再生のための音源加工－マスキング効果が音源加工に与える影響について

摘要

定額制音楽配信サービスやスマートスピーカの普及により、音響再生の多様化が進んでいる。例えば、スマートフォンなどの携帯型デバイスによる音楽再生では、音楽聴取時のバッテリ消費が問題となっている。本研究は、音響再生の省電力化を目的として、新たな音源加工方式を提案する。著者らは、聴覚特性を考慮し、周波数帯域ごとのパワー調整を行うことにより、加工音源再生時の消費電力と主観印象との関係を調査している。本稿では、心理音響モデルに基づくマスキング特性を考慮し、より低歪な音源加工方式を提案する。提案法による加工音源再生時の消費電力に関しては、原音再生時と比較して約20%の削減を達成した。また、聰取実験の結果、提案法は、従来法と比較し、加工による主観的歪みを低減できることを確認した。