イッセー尾形の颜

摘要

イッセー尾形という俳優がいる．19日O年にデビュー．以降現在に至るまで，演出家の森田雄三とともに，独特のスタイルで一人芝居を演じ続けてきた．イッセーの舞台では，落語のように一人で同時に数役を演じるわけでもなく，途中に朗読が入るわけでもない．彼一一人で一役を演じるだけで，周囲の人間や状況を舞台上に見事に浮かび上がらせる．イッセーは一つの公演で5～7演目を演じ　 その演目ごとに見事に「顔」をかえる．たとえば，大家族をもつ建築業のお父ちゃんの顔，小さなカウンターがすべてであるバーテンダーの顔，夫に先立たれ一人で魚屋を切り盛りしている奥さんの顔，C調サラリーマン，歌手，女子高生，政治家舞台が明転する度に，まったく異なった印象の「顔」が次々と舞台上に現れる．そのため，最後にイッセー自身が登場すると，こんなにも「あっさり」とした顔の人だったのか，と驚くほどである．一体イッセーはどうやってそんな印象深い「顔」の数々を作っているのだろうか.