総括: 骨?軟部腫瘍/骨?軟部腫瘍に対する薬物療法の最前線

摘要

2019年6月に保険適応となった組織検体を用いたがんゲノムプロファイリング検査に続いて，2021年8月には血 液検体を用いたがんゲノムプロファイリング検査が保険適応となるなど，わが国のがん診療にゲノム医療が様々な 形で実装されつつある。一方，免疫チェックポイント阻害剤に代表されるがん免疫療法は,手術,放射線，薬物療 法に次ぐがん治療の第四の柱として,多くのがんの標準治療を塗り替える勢いで開発が進められている。本企画で は,このがん医療の大変革期における骨?軟部腫瘍（肉腫）のゲノム医療,新たな治療開発の最新の話題について，気鋭の3人の先生方にご執筆いただいた。NTRK遺伝子はトロポミオシン受容体キナーゼ（TRK）をコードする遺伝子であり,染色体上で融合遺伝子を生 じた場合，MAPK経路などのシグナル伝達経路を恒常的に活性化する融合蛋白を生じ，がん細胞の増殖および生存にかかわることが知られている。NTRK融合遺伝子の肉腫における関与とNTRK阻害剤による治療に関して，わ が国においてこの領域をリードしている国立がん研究センター東病院の内藤陽一先生に解説いただいた。