c軸ジグザグ分極反転ScAlN薄膜を用いたBAW送受波型トランスバーサルフィルタ

摘要

弾性表面波（SAW）の送受波によって駆動するトランスバーサル型フィルタは振幅特性と位相特性の独立制御、フォトリソグラフィによる大量生産が可能などの特長から周波数フィルタとして用いられてきた。一方で、移動体端末用のRFフィルタにおいては、近年の耐電力性向上、高周波化の要求から、SAWを使った共振子型のラダー型フィルタは、バルク弾性波（BAW）共振子を使ったラダー型フィルタに置き換わっていっている。これまで、送受波一層ずつの圧電薄膜を使ったクリスタルフィルタは報告されているものの、BAWのトランスバーサル型フィルタの報告は見当たらない。これは分極反転層の形成が困難なためと推察される。本研究では、分極反転層を用いたBAW送受波型トランスバーサルフィルタを提案する。BAWのトランスバーサル型フィルタは、IDTを使ったSAWデバイスよりも耐電力性の高く魅力的である。本報告では、圧電層と横波音響インピーダンスの近いZカット水晶基板の両面に、高い電気機械結合係数k_(35)'を持つc軸ジグザグ分極反転ScAlN薄膜を成長させ、トランスバーサルフィルタを作製した。これにより、擬似横波を基板表面から裏面に送受波することで、フィルタ特性を得ることに成功した。