脳神経倫理と生命倫理 生命倫理のバルカン化論争と応用倫理の収斂

摘要

近年登場した脳神経倫理（neuroethics)は活発な議論を展開し，順調に発展しているようにみえる。国際学会(Neuroethics Society)が組織され,The American Journal of Bioethics-Neuroscienceや'Neuroetmcs といった専門のジャーナルも刊行され始めた。そうして蓄積されつつある議論では，神経科学（neuroscience)に関わるさまざまな倫理的問題が取り上げられるだけではなく ，脳神経倫理そのものの位置づけが大きな関心の的となってきた。後者に関しては，当初，もつばら生命倫理（bioethics)に対する関係が議論されていた。それが最近では，単に生命倫理だけではなく，遺伝子倫理(genethics)，ナノ倫理(nanoethics)，情報倫理(information ethics), 環境倫理(environmental ethics)といつた多様な応用倫理との関係も含めて検討が加えられるようになつている。