間葉系悪性腫瘍

摘要

軟部組織肉腫は，さまざまな間葉系悪性腫瘍の総称で，犬の皮膚および皮下腫瘍の15%,猫の7 %を占める弋 一般的に軟部組織肉腫のサブタイプは，組織学的特徴,および動態が類似しており，局所浸潤性が強く，不完 全切除後の局所再発率は，グレード1で7 %,グレ一ド2で34%,グレード3では75% (4症例中3症例）と報 告されている(表1)。さらに，遠隔転移率はグレード1で0~13%,グレード2で7~27%,グレード3では 22-44%と報告されている通常,遠隔転移は病気の経過の末期でみられることが多く，Kuntsらの研究では遠隔転移がみられるまでの 期間中央値は365日であったという報告があるため，術後の遠隔転移のリスクを減少させるという目的の化学 療法には限界がある。このため，犬の軟部組織肉腫は一般的に外科的切除や放射線療法，またはこれらのコン ビネーションなどの局所治療で治療するのがスタンダードである。オンコロジストの間では，グレード3の軟部組織肉腫に対して局所療終了後，ドキソルビシンベースの化学 療法を推奨する傾向があるが，その生存期間延長を示唆する研究は未だ存在せず,理論的利益のみが化学療法 を推奨する根拠に留まるのが現実である。