偶蹄類を含む哺乳類動物の腎臓病の病理

摘要

伴侶動物（ィヌ，ネコ）の腎臓病の病理診断お よぴ研究材料の対象の多くは剖検腎である.食用動物であるブタでは個別診療は行われず，5?6 か月という幼若期に出荷?処理されてしまうこと と食肉検査で肉眼的異常を認めない場合は病理 検査に供されないことなどから腎臓病の症例は稀 である.たとえ肉眼的?組織学的に腎臓の機能 に異常をきたすような腎臓病があった場合でも， 残念ながら尿や血液臨床検査データはほとんど得 られない.獣医学分野で大動物といわれるゥシの 腎臓にはアミロイド症ゃ肾盂腎炎が多いとされる が，ゥマの腎臓病の報告は少ない.個別診療が 行われている伴侶動物においても腎生検は普及し ておらず，剖検腎では腎臓病の進行性や荒廃した 腎病変から原発疾患を知ることが難しい.また， 生前に腎臓病が指摘されておらず，腎病変が剖検 の偶究所見であることも多い.このように獣医 学における腎臓病の病理学的研究の背景は医学 とはかなり異なっていることを述べた上で，獣医 病理学的な立場からィヌ?ネコなどの伴侶動物 を中心として動物の腎臓疾患について概説する.