進化に伴った血圧の変化の話題

摘要

最近の進化学において，脊椎動物は海よりも塩 分濃度の低い沿岸海域で発生し，淡水域に移動して海に戻るものと，陸上に移動するものの2つ に分かれたという説が唱えられている.このう ち陸上に移動してきた脊椎動物は，乾燥や重力 のような過酷な環境の変化に対応するため，さま ざまな進化を遂げたとされている.たとえば，水 生の脊椎動物は浮力を利用して重力の影響を受 けにくいが，陸上では重力に逆らつて全身に血液 を循環させなければならなくなったことから，血 圧の上昇が必要になったと考えられている.さ らに，陸上動物は狩りをしたり敵から逃げたりす るために身体機能の向上が求められ，酸素や栄養 を力ラダの隅々まで循環させるために，より一層 の血圧の上昇を必要としたと考えられる.とこ ろが現代の社会では狩りや敵から逃げる必要は なくなり，さまざまな乗り物による移動手段を利 用するようになったことから，進化の過程で獲得 した高い身体機能を発揮する機会は少なくなつ た.このような環境の変化において人類は，過 食や運動不足などの急激な生活習慣の変化や高 齢化社会に適応することができておらず，その結 果，高血圧を生じて心血管リスクを持つ人口が 世界レベルで爆発的に増加している.