腹膜透析患者の運動療法

摘要

透析患者に対する運動療法は,身体活動を維 持する，すなわち,サルコペニアやフレイルを回 避することで，合併症を予防し生命予後を改善 することを目指している.2018年に腎臓リハビ リテーション学会より“腎臓リハビリテーション ガイドライン”が発行され,透析患者に対する 運動療法の目的，有効性，方法が示された.さら に,2022年には国際腹膜透析学会(ISPD)および Global Renal Exercise Network(GREX)からは, 腹膜透析(PD)における身体活動と運動に関して のエビデンスのレビューおよび運動療法の実践の 注意点に関しての提言がなされた.運動療法に 関する臨床的エビデンスは，血液透析(HD)に比 ベてPDについて圧倒的に少なく,また，その 研究コホートには透析患者としてHDとPDが混 在している場合がほとんどである.他方,PD 患者は，HD患者と異なり腹腔内に透析液を貯留 するため,ときに腹腔内圧上昇に伴う腹部膨満 感を自覚し,運動の妨げとなるなど，特別な配慮 は必要である.さらに，腹腔内に貯留した透析 液の影響で高血糖や肥満を呈する場合6)7)には， PDの利点である残腎機能の保持に対して管理不 良な高血糖がその阻害因子となりPD離脱へ至る 懸念もある.この点を含めて，PD療法の持続 性を高めるためにも，PDの特徴である治療時間 の拘束が少ないメリットを生かして，適切な運動 を行うことにより身体活動性を維持あるいは向上 し,生活習慣病にかかわる阻害因子を改善するこ とがPD患者の運動療法の重要な目的となる.