乳がん脳転移に対する治療戦略

摘要

乳がんは,脳転移を含む中枢神経系(central nervous system ； CNS)への転移を認めるがん腫 では2番目に頻度が高く,乳がんの最大で約3分 の1がCNS転移と診断されている.これまで脳転移を有する症例は，懸念される 毒性,血液脳関門を通過する薬剤の限られた有 効性,生存期間の短さ等の予後不良の観点から， 歴史的に臨床試験の対象から除外されてきた. 最近の報告では，転移再発乳がん，肺がん,悪性 黒色腫を対象とした223の臨床試験のうち，52 試験(23%)が脳転移を有する症例をすべて除外 していた.別の報告では,進行固形腫瘍を対 象とした第III相臨床試験の446試験のうち，169 試験(36%)が脳転移を有する症例を除外して いる.さらに,140試験(約30%)は病勢がコン トロール不能等の条件付きで脳転移除外であっ た.