病理医の生涯教育

摘要

従来,「病理」を専門とする医師は,病理学研究（い わゆる基礎医学）に主軸を置く者と,病理診断学（臨 床医学に相当）を中心に行う者とに分けられていたよ うである.その後,病理専門医（旧認定病理医）の制 度が整えられ,現在は日本専門医機構の19基本領域 の専門医の一つとして位置づけられている.日本専 門医機構が認定する「専門医」は,「それぞれの診療領 域における適切な教育を受けて,十分な知識?経験を 持ち患者から信頼される標準的な医療を提供できると ともに先端的な医療を理解し情報を提供できる医師」 と定義されていることから,病理専門医も臨床医とし ての一翼を担っていることは疑いもない.このような 現状の中で,病理を専門とする医師は,必然と病理専 門医の取得と更新に力を注いでいるのが現状である.時代とともに，病理医の業務内容も変化している. 以前は剖検数年間100件以上の施設が多数存在して いたが,現在は年間50件を超える施設は限られてい る.一方,最近は生検や外科手術材料に対する病理診 断が,病理医業務の主体を占めるようになってきてい る.各種臓器癌の取扱い規約が整備され,規約に準拠 した適切な記載が不可欠であるのみならず,生検にお いても詳細な記載が必要とされることが少なくない. さらには,検体の取り扱いから病理診断に至るまでの 精度管理も求められる時勢となっている.本稿では,上記の状況を鑑みつつ,病理医の生涯教 育に関する現状?課題?展望について説明したい.