鑑別の森［14］消化管癌のSSとSE: Answer 1 :伴慎一

摘要

Question: 進行癌での深達度の評価でSSとSEの評価法は施設により差があるようです.HE染色のみで判断していますか?あるいは漿膜下弾性線維をEVGなどで染色して評価していますか?そもそも“露出”とは?Answer 1: I.なぜ,このような問いが生じるのか? 胃癌や大腸癌といった消化管癌の壁深達度は,それらの進行度（Stage）を決めるための局所浸潤度因子（T因子）です.周知のように消化管壁は最も内側の粘膜組織から漿膜下組織に至る層構造を呈しており,粘膜内に発生した癌が層構造のどの部位まで浸潤しているかによって壁深達度すなわちT因子が規定されています.したがって，それぞれの深達度は,概念的には容易?明確に評価できるようにも思われます.しかし，癌細胞あるいは癌細胞塊が浸潤してゆくプロセスは，それらが単純に粘膜以深の既存組織構造を通過してゆくということではありません.個々の症例によって,その所見や程度は様々ですが,癌はそれ自身が特異的な間質を形成するとともに，組織の炎症反応の惹起やその破壊を引き起こしながら,その占拠域を広げてゆきます.したがって,我々が壁深達度を評価している癌浸潤部の組織は,しばしば既存の組織構築が癌浸潤に伴って改変?修飾された組織であることを念頭に置く必要があります