鑑別の森13］胃の腸型腺腫と高分化管状腺癌―Answer 1

摘要

病理医はポリペクトミーやEMRで採取された，この両疾患の診断を日常的に行っています.しか し両者の診断基準は個人により差があると思われます.中間的な例に遭遇した際，専門の先生はど のように鑑別していますか?最近，同一の病院で経験した腸型腺腫と高分化管状 腺癌の生検?内視鏡的粘膜下層剝離術（ESD）例を提示する.【症例1】腸型腺腫Helicobacter pylori （H. pylori）除菌歴のある60歳代男性.萎縮性胃炎を背景に褪色調で低い扁平隆起性病変から生検が施行された.内視鏡所見を図1-1に示す.臨床診断は「腸型腺腫または低異型度な高分化管状腺癌」であった.生検組織所見を図1-2に示す.弱拡大でみると全体に極性の保たれた核をもち好酸性の細胞質をもつ高円柱細胞がよく揃った管状構造を示して増殖している（図1-2a）.中拡大（図1-2b）で観察すると刷子縁をもつ小腸型吸収上皮への分化を示す細 胞が主体で杯細胞への分化を示す細胞も混在してい る.異型上皮中層では紡錘形となった核の密度が増し 核分裂像が散見されるが（増殖細胞帯の形成），表層 部では核が小型化し核密度も低下している（表層分 化）?異型上皮深部でも核が小さくなる傾向を示す（深層分化，図1-2b）,筆者は"Intestinal-type adenoma, Group 3"と診断した.