完全結晶成長による金属酸化物ナノ構造体での潜在的巨大応答性の実現

摘要

マテリアル革新力強化戦略が示すように，マテリアル革新がイノベーションの創出に必要不可欠である。これはマテリアル分野を俯瞰的に展望する戦略であるが，マテリアル分野と一口に言っても多岐に渡る要素技術から構成されている。我々のグルーブでは，表面科学に立脚したサブnm精度でのものづくり技術をベースに，遷移金属酸化物を始めとする機能性材料を対象としナノ-マイクロ立体空間制御構造の機能開拓に取り組んでいる。遷移金属酸化物は電子間の相互作用が強い強相関電子系物質群であり，電子の持っている電荷の自由度に加え，スピンや軌道の自由度および電子-格子の相互作用が物理的性質に重要な役割を担っている。例えば，バナジウム，ニッケル，鉄の酸化物でみられる金属-絶縁体相転移では，僅かな摂動（温度，磁場，キャリア濃度）で絶縁体状態は雪崩的に融解し，金属相，強磁性，高温超伝導へ相転移する。相転移に伴う抵抗変化は劇的で10~3～10~5にも及ぶため，次世代エレクトロニクス実現に向けた研究が盛んにおこなわれ，この取り組みの 中で集積化，機能増大化の観点からナノエレクトロニクスの重要性が増し，精密制御されたナノ構造体が求められている。