潰瘍性大腸炎の病態-クローン病との相違点は?

摘要

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease :IBD)は潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis :UC)とクロ ーン病(Crohn's disease : CD) の2つに大別される疾患である。しかし,多種 多様な情報を収集するomicsに基づくビッグ データのAIを駆使した解析手法の進歩,さら にさまざまな分子を標的とした新薬の臨床試験 結果から,UCとCDの病態には,遺伝,生活 習慣,疾患の進行度合いなど多種多様な共通 および疾患特異的な因子が複雑に絡み合って いると考えられる。事実,inflammatory bowel disease unclassified (IBDU)のように,UC とCDの判別が困難な症例も多く認められる。 よって,現在のAIを活用したomicsデータ解 析の急速な進歩から考えると,将来的にはUC とCDという明確な住み分けでなく,治療法に 依存したIBD#1, IBD# 2, IBD# 3といったよ うな高度に細分化された分類へと進化していく 可能性も否定はできない。よって,本稿では,Genome Wide Association Study (GWAS), 疫学(虫垂切除と喫煙)，JAK阻害剤の治療効 果といったUCとCDで相反する結果を示す典 型例から,UCの病態を簡潔に述べる(図1)。