劇症型心筋炎の予後予測はできますか？慢性心筋炎への移行は予測できますか？

摘要

劇症型心筋炎の予後を予測する標準的な方法は定かでない. 予後改善のために適切なタイミングで適切な補助循環を用いることが重要であ る.急性期を乗り越えて心機能が改善した症例が慢性化する頻度は高くない.心筋炎は心筋で生じる炎症性疾患であり，その原 因の多くはウィルス感染と言われているが，細菌や 真菌，寄生虫による感染や代謝異常，免疫異常，薬 物，放射線，熱などの物理的刺激など多岐にわた る.最近では免疫チェックポイント阻害薬による急 性心筋炎の報告例も散見される.重症度に関して， ほとんど症状を伴わない軽症例から生命を脅かす重 症例まで様々であるが，本稿では最重症例である劇 症型心筋炎に関して述べる.劇症型心筋炎は急激な 血行動態の破綻を伴い，致死的な経過をたどる急性 心筋炎であり，本邦では一般的には補助循環，特に経皮的心肺補助装置(PCPS)を必要とする症例を劇症型心筋炎と称することが多い.しかしながら， 劇症型心筋炎の厳密な定義は国際的にいまだ確立し ておらず，欧米では血行動態安定のために静注強心 薬を要する症例も劇症型としていることが少なくな いため，海外文献を参照する際は，その定義にも注意する必要がある.