腸管が心不全に及ぼす影響と病態はどのようなものですか？

摘要

腸には数多くの腸内細菌が生息しており，腸内細菌叢は宿主の免疫系?代謝系に大きな影響を及ぼす. 腸内細菌代謝産物であるtrimethylamine N-oxide (TMAO)の血中濃度高値は，心不全を含む循環器疾患の予後不良因子である.また，心不全患者では腸内細菌叢の変化を認めることが報告されている. 腸内細菌自体や腸内細菌代謝産物への介入が，心不全の新規治療法につながる可能性がある.腸には数千種数百兆個の腸内細菌が生息してい る.近年の次世代シーケンサーの発達により，難培 養性の菌種を含めて腸内細菌の群集構造を短時間? 低コストで解析することが可能となった.また，腸 内細菌の遺伝子や代謝産物の膨大なデー夕を解析す るバイオインフォマティクスの発展により，腸内細 菌研究は目覚ましい進歩を遂げてきた.腸内細菌叢 は生後より宿主と制御しあいながら，宿主の免疫系 および代謝系に大きな影響を及ぼすことが解明さ れ，ヒトの健康や様々な疾患の発症と密接にかかわ ることが相次いで報告されている.