がん免疫療法による心血管系の免疫関連有害事象（irAE）

摘要

がん免疫療法はがん患者の予後を改善する一方で,免疫関連有害事象が問題となっている. がん免疫関連心毒性,特に劇症型心筋炎は予後が不良であり,早期診断?治療が重要である. がん免疫関連心毒性の病態?機序には不明な点が多く,実臨床データの蓄積が待たれる. がん免疫療法は,がん細胞を直接標的とする従来のがん治療とは異なり,宿主の免疫応答を利用することでがん免疫を活性化し, がん細胞を殺傷する治療法である.なかでも免疫チェックポイント阻害薬 （immune checkpoint inhibitor; ICI）は,その有効 性から多くのがん種に適応が拡大する一方で,臓器横断的に出現する免疫関連有害事象（immune-related adverse events; irAE）が問題となっている. なかでも循環器領域のirAE（がん免疫関連心毒性）は,当初は頻度が少なく注目されていなかったが, ICIを投与される症例数が増加するにつれて重篤な経過をとる劇症型心筋炎が報告されるようになり,「がん免疫療法ガイドライン第2版」に「心筋炎を含む心血管疾患」の項目が新たに追加されている.本稿では,がん免疫療法に伴い出現するがん免疫関連心毒性に関して,その病態と対応についてICI療法ならびにキメラ抗原受容体T細胞（chimeric antigen receptor T cell; CAR-T）療法を中心に, 最近の知見を含め概説する.