成人期Fontan術後患者の問題点，PLE

摘要

Fontan手術は低酸素血症の改善を目指す手術であるが，特殊な血行動態によ り遠隔期の合併症は少なくない.Fontan術後には不整脈，体心室機能低下，肺血管抵抗の上昇，といった循環 器合併症だけでなく，血栓塞栓症，肝?腎機能異常や蛋白漏出性胃腸症など全 身臓器に注意して診療する.正常の循環であれば，全身から戻ってきた血液は 右房から右室に入った後，右室から肺に駆出され る.その後，肺から再度心臓に戻ってきた血液は， 左房から左室に入り，左室から全身に駆出される(図1a).このとき，右室と左室がポンプとして機 能し各々が肺循環と体循環に血液を送っている.先天性心疾患の外科手術の際には，原則としてこ のような循環が成立する二心室修復を目指すが，次 のような場合には二心室修復が困難となる.ポン プとして使える心室が1つしかない（図2),心室は2つあるが分離できない，房室弁として機 能するサイズのものが1つしかない，大きな房 室弁が1つで分離できない，などの場合である. そこで1971年にFrancis FontanによりFontan手 術と呼ばれる一心室修復が報告された（図3).そ の後Fontan手術は様々な変遷をたどって，現在の心外導管を用いたFontan手術(extracardiac Fontan) にたどり着いた（図4). Fontan手術では全 身から戻ってきた静脈血を，心室を介さず直接肺動 脈に導き，肺から心臓に戻ってきた動脈血は体心室 から全身に駆出される.