高速シークエンサーで辿る硝石生産の微生物生態学的足跡

摘要

16世紀から19世紀にかけ、白川郷?五箇山集落の合掌造り家屋の床下で軍事用途の黒色火焰の原料となる「焰硝」(硝石、KNO_3)が生産されていたことはあまり知られていない。その生産方法は、養蚕により排出される蚕糞、ヒエや山草などの非食用部分、人尿等の廃棄物を床下に設けられた「焰硝床」で土壌と混合し、定期的な切り返しによつて好気条件を維持して微生物による硝化作用を促し、廃棄物に含まれるアンモニアから生じる硝酸を含む煙硝土を生産し、そこに水を加えて硝酸イオンを抽出し、さらに木灰で処理することで硝石を精製するというものである。このようなバイオリファイナリー技術の先駆けとも言える硝石生産法に関する最初の記載は、1400年頃に出版された「Bellifortis」という軍事技術書に見ることができ、チリにおいて大規模な天然硝石鉱床が発見された1900年代初頭までは、欧州やインドにおいても同様の方法で硝石の生産が行われていたことが記録されている。