生理活性天然物化学

摘要

生理活性天然物化学を対象とした研究の講演は今回の大会ではプログラムがいつもより不親切で少々難があった。実際、最終日は、天然物化学の発表が、シンポジゥムの裏番組であった。それでも、面白い発表はいくつかあった。藤盛ら（秋田県立大?農）による、クサギカメムシにおける「トリデカン生合成経路とそれに関わる酵素」に関する発表では、カメムシの分泌腺でガソリンの成分のトリデカンが見られたという。エサ中に安定同位体のグルコースを加えたのち、分泌腺の脂質成分を質量分析すると、トリデカンの分子質量が増加していたことから、カメムシはトリデカンをnovoで作っているということになる。将来的に石油成分をカメムシに委ねる、というのは現実的ではないが、生合成酵素を同定できれば面白い。実際に、分泌腺の粗抽出液からは、演者らが仮定した生合成経路の酵素が抽出できていたので、トリデカンを酵素的に合成するという計画は実現可能である。つまり、人為的にトリデカンを合成する微生物を調製し、バイオ燃料を得るという計画だ。実に農芸化学的な発想で、興味深い。