黒麴菌のゲノム解析

摘要

黒麴菌やそのアルビノ変異株の白麴菌は、泡盛や焼 酎の製造に利用されている有用糸状菌である。清酒や 味噌?醤油製造に利用されている黄麴菌と同じように 原料穀物のデンプン質を分解する酵素の供給源である が、大きな特徴として製麴中に大量のクエン酸を生産 することが知られている。このクエン酸により泡盛や 焼酎醪は酸性に保たれ、暖かい沖縄や九州での醸造に 適しているとされている。この黒麴菌については、欧 州において工業的クエン酸製造に使われている同じように分生子の黒いAspergillus nigerとは別の生物種 であること、その学名も1901年に乾によりはじめて 論文化されたAspergillus luchuensisが国際的に認め られたことを、すでに本誌の解説記事で報告した。 今回は、黒麴菌NBRC 4314 (RIB 2604)のゲノム解析 の論文がようやく公開されたことから、そこから見 えてきたことについて2つほど簡単に紹介したい。