光照射により代謝フラックスをコントロールする技術の開発

摘要

微生物を利用した有用物質生産において、解糖系やTCAサイクルといった中枢代謝は目的物質を合成するための炭素骨格、エネルギー、還元力を供給するための重要な役割を担っている。細胞に取り込まれたグルコースなどの原料は、多数の連続した反応によって様々な物質に変換される。この代謝経路における物質の流れをフラックス分布と呼ぶ。目的物質の生産性向上には、フラックス分布を生産に最適な状態に調節することが必要である。これまで薬剤誘導の遺伝子発現制御による代謝の調節が行われてきたが、培養液に加えた薬剤を除くことは難しいという課題があった。発酵プロセスにおいて、培養槽内の環境は時々刻々と変化するため、状況に合わせて代謝を最適な状態に制御するには、可逆に働くスイッチが必要である。近年、光照射により可逆的に遺伝子発現を制御する技術が発展してきた。本稿では、この技術の中枢代謝経路のフラックスの制御への応用について概説する。