うつ病の原因となるヒトヘルぺスウイルス6のSITH-1遺伝子の発見

摘要

大規模な遺伝子研究が行われたにも関わらず、ヒト遺伝子の中にはうつ病の原因となる有効な遺伝子は発見されていない。筆者らは、ヒトに寄生する微生物を含む遺伝子群(メタゲノム)に研究対象を広げ、ヒトに潜伏感染しているヒトヘルぺスウイルス6(HHV-6)が嗅球で産生する、潜伏感染タンパク質SITH-1を発見した。マウス実験により、SITH-1は脳のストレスを亢進させることで、うつ病を発症させることが分かつた。嗅球で産生されるSITH-1と疾患との関係を検討するために、筆者らは、SITH-1特異的な抗体検査によって体内でのSITH-1産生を判定する方法を開発した。本稿ではSITH-1の同定と、うつ病と診断されない程度の軽いうつ症状早期診断、発症予測について紹介する。