炎症性乳癌

摘要

炎症性乳癌とは，硬結，熱感,浮腫,紅斑などの臨床徴候を示 し，急速増大する悪性度の高い乳腺癌の臨床診断名である。 「炎症性」というが，炎症細胞の浸潤は炎症性乳癌の診断に まったく関係がなく ，診断には特異的な臨床徴候を熟知して おく必要がある。炎症性乳癌はまれな腫瘍だが,乳腺癌の中で はもつとも侵襲性が高く，犬でも人でも激症型の臨床経過をとり,生存率は極めて低い。生存期間中央値は30日を超えな いとされている1'"。ごく初期の症例では内科治療により数力 月の延命が望める可能性がある。犬の乳腺腫瘍のうち7.6%が 炎症性乳癌であり，猫での発生はまれである'a。