炎症性乳がん

摘要

炎症性乳がんは悪性度が高く.極めて予後が悪い腫瘍の1つ である。臨床的には浮腫,紅斑,熱感,疼痛,および硬結感を伴う 乳腺病変として認められ胭1),病理組織学的には皮膚のリン パ管への腫瘍細胞の浸潤が特徴所見として挙げられるセ炎症 性乳がんはあくまでも臨床病理学的な分類の1つとされてお り，そのため1999年に発表されたWHO分類では組織学的分 類としての炎症性乳がんの記載はない。一方,2011年に Goldschmidtらが犬の乳腺腫瘍に対する新たな分類を発表し たの〇 これは“ Tumors in Domestic Animals” の第 5 版にも 掲載され,炎症性乳がん(Inflammatory carcinoma)はその 分類の中で悪性上皮系腫瘍の特殊なタイプ(Malignant Epithelial Neoplasms-Special Types)の中の1つとして区 分されている3)。しかし,前述したようにあくまでも炎症性乳 がんは臨床病理学的な診断名であり,組織学的には退形成膈 (Anaplastic carcinoma),面飽痛(Comedocarcinoma),ある いは脂質産生癌(Lipid-rich carcinoma)などと診断される悪 性度の高い乳腺腫瘍のうち,特徴的な所見をもつ一部の腫瘍 が炎症性乳がんと呼称されている2)〇